《 六〇〇度の法則 》
今年は桜の開花予想が大きく外れました。横浜市の開花は三月三〇日頃のようですが、当初はもっと早い予想だったと思います。三月十九日時点では、三月二十四日頃の開花予想だったようです。今年は珍しく、かなり予想がはずれてしまいました。桜にまつわるイベントを準備していた方は、大変だったことと思います。
という事で、専門家はどうやって開花予想をしているのかと疑問に思い、予想の根拠を調べてみました。
桜の花の芽は、前年の夏には出来ているそうです。その花が秋から冬にかけて休眠状態に入って年を越します。そして十分に寒くなった後に、気温がぐっと高まると休眠から目覚めるそうです。この目覚めのことを「休眠打破」(きゅうみんだは)というそうです。その休眠打破を起点として、毎日の最高気温を足したものが六〇〇度になると、桜は開花すると予想するのだそうです。具体的には、二月一日を「休眠打破」の日と仮定し、毎日の最高気温の合計が六〇〇度になりそうな日を、桜の開花日として予想しているのだそうです。過去十年を見ると、この方法で凡そ当たったようです。しかし、残念ながら、今年は七00度を超えても桜は開花しませんでした。
そして、外れた理由についての記事もあったのですが、「冬が暖かかったので、休眠打破がうまくできず、開花のスイッチが入らなかったのではないか」、という事が書いてありました。いずれにしても、今年は桜の方に開花を遅らせる何かしらの訳があって、自らの開花時期を遅らせたのだと思います。仕方がありません。
ところで、私の保育園では、今年も多くのこども達が保育園を卒園し、小学校に巣立っていきました。こどもは一人ひとり違う生き物ですから、桜と同様、いつどんな風に花を咲かせるか分かりません。開花時期が遅いと、周りの大人はやきもきすることも多いと思います。しかし、それぞれの子にとって最適な時に、最適な咲き方があるはずです。是非、保護者の皆さんには勝手な予想をすることなく、温かい目でこどもの成長を見守ってほしいと願っています。
仏様のように、我々はこどものすべてを見通すことは出来ませんが、こどもの成長を見守り、待つことだけは出来るはずです。
「貪愛(とんあい)」
*「貪」:貪(むさぼ)る。欲深い。不当に物をほしがる。
*「愛」:仏教でいう「愛」は、執着する、根源的な衝動、というような意味です。
*ですから、「貪愛」とは、欲深く衝動が抑えられない、どこまでも執着する、というようなことを表し
ます。何に執着するかといえば、もちろん自己の欲求です。
私も時々スーパーに買い物に行きます。最近は、ほとんどお酒かお酒のおつまみを買いに行く程度です。それでも週に1、2度スーパーに買い物に行きます。また、新型コロナウイルス感染拡大のせいでみんなが外食を控えているせいか、スーパーが混んでいるような気がします。
ところで、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、スーパーで明らかに変わった事は、レジ待ちの時に立つ場所にシールが貼られた事です。以前は、なんとなく列を作って待っていましたが、今はソーシャルディスタンスを保つため、シールが貼られました。これは私の個人的な感想なのですが、このシールができたお蔭でどの列がどれくらい混んでいるか、分かり易くなりました。以前は何となく並んでいるので、並んでいる人数と列の長さがイコールではありませんでした。しかし今は等間隔に並んでいますので、列の長さ=待っている人数となり、レジの混雑状況が一目瞭然です。
ここで難しいのが、単に列の長さで待つ列を選ぶと痛い目に会うということです。まず、レジを打つスタッフの人数が違う場合があります。中には、レジ打ちを二人で行うことがあります。そうなると処理能力は2倍ですから待ち時間は断然短くなります。また、待っている人の買い物かごの中の量の問題があります。私のように、お酒とおつまみ程度ならすぐに終わりますが、大家族一週間分の買い物をする人もいます。前の人のかごの中身をよく観察しないと、時として痛い目に会 います。そして根本的な問題として、レジを打つ店員さんの能力は千差万別です。ベテランの人もいれば、研修中の人もいます。店員さんの処理能力もよく観察しないと、これも大変です。
ということで、なかなか正解のレジに並ぶことは出来ません。結果として正解だったときは、心の中でガッツポーズをとっています。仏教用語に、愛を貪ると書いて「貪愛」( とんあい)というものがあります。この言葉の意味を簡単に表すと、常に自分が可愛い、常に自分が得をしたい、という事です。たかがレジ待ちでも、「周りを出し抜きたい」と願う、そう願っている私の生の姿に気づかされます。
《アンサング・ヒーロー》 平成21年12月1日作成
日本経済新聞の2008年11月27日の夕刊に、分子生物学者の福岡伸一さんのコラムの文章がありました。以下に要約して紹介します。
「過去のノーベル賞の業績をつないでいくと、科学の発展の華麗な歴史を語ることができる。しかし、それは遠くから北アルプスを眺めて、あれが奥穂高、あれが北穂高、あれが槍ヶ岳、と稜線をつなぐ行為に似ている。実際には、巨大な山の塊とその裾野がどこまで広がっているのかという実像は、よく見ることができない。
今から50年程前、二人の若い科学者、ワトソンとクリックは、DNAの構造が二重螺旋構造をとっていることを明らかにした。そして分子生物学の幕が切って落とされた。ワトソンとクリックの発見は、20世紀最大のエポックとして歴代のノーベル賞の中でもひときわ輝いている。
しかし、DNAの構造を明らかにすればそこに素晴らしい褒章が待っていると彼らが考えたのは、DNAこそが遺伝物質の本体であることが、既に先人によって分かっていたからである。また、DNAが対構造をとっているというアイディアに彼らが到達できたのは、DNAの組成を詳細に調べていた先人がいたからである。またそれが螺旋状にからまっていることに気づいたのも、他の研究者が出した結晶構造のデータを知るチャンスがあったからである。つまり、頂上に達した一握りのノーベル賞受賞者への道筋は、すでにたくさんの人々によって拓かれていたのである。それらの人々はノーベル賞受賞者と同じか、あるいはそれ以上の切実さを以て、自然の謎を知りたいと願ったのである。謳われることがなかった英雄たち、アンサング・ヒーロー。私は、彼ら彼女らに限りない親しみを感じる。」というものです。
私たちは、自分が得たものや栄誉を全て自身の努力の成果だと考えます。しかし実際には、このコラムのように多くの先人があって今の私たちがあるのだと思います。浄土真宗では、葬儀や法事は報恩感謝のために勤めると考えます。それは、先人の業績を含め、多くの恩恵のお蔭をもって今の私たちがある、という考えに基づいているのです。
*私は見たことはないのですが、「アンサングシンデレラ」という病院薬剤師さんの活躍を描いたテレビドラマ(中身を見てないので本当のところは分かりません)の宣伝を見て、過去に書いた自分の文章を思い出して、今回ファイルから見つけ出しました。新型コロナウイルスの感染拡大の中で、多くの医療関係者の方々が奮闘していることは間違いありません。しかし、私たちはその姿を見ることはありません。なぜなら、私たちがテレビを通して見ることができるのは、危険なウイルスとの戦いの最前線でもないですし、最前線で戦う医療関係者の方々の姿でもないでしょう。でも確かに、謳われない多くのヒーローが、懸命に戦っているはずです。*日付は、文章を作成した日付となっています。*その後の私のコメントが付いているものもあります。
《上野動物園のゴリラ》平成二十六年十月一日
昨年の六月頃にラジオを聴いていると、元・上野動物園の園長だった方が、次のような話をしていました。
上野動物園では、約五十年前にゴリラの檻にそれまでの鉄製の柵に変えて強化ガラスを設置したそうです。鉄製の柵に比べ強化ガラスは死角がなくて見やすくなるだろうという事で、上野動物園では初めて強化ガラスの檻を設置したそうです。
しかし、初めて設置して見ると思いもよらない大きな問題が発生しました。ガラスの檻を設置してから突然、ゴリラが下痢をし始めたそうです。治療法も分からず、原因も分からずほとほと困ってしまったんだそうです。そんなある時、ゴリラの檻の非常用の鉄の柵が誤作動で降りてしまうという事故が起きました。初めての試みだったので強化ガラスだけでは不安だったのでしょう。万が一の時の為に設置していた鉄の柵が誤作動を起こして、降りてしまうという事故が発生したそうです。
すると不思議な事に、ゴリラの下痢がピタッと止まったのだそうです。要するに、人間とゴリラの間を隔てる鉄の柵が無くなってより不安に思っていたのは、人間ではなくゴリラの方だったという事なのです。
私たち人間の方から見れば、ゴリラが人間を襲うのではないかと心配していましたが、ゴリラの方から見れば人間に襲われるのではないかと不安で不安で体調を崩し、下痢をしていたというのが真実なのでしょう。言われてみれば、本人の気持ちに反して拉致され、動物園に連れてこられているのはゴリラの方です。人間の方は、自ら望んで動物園に足を運び、好きでゴリラを見ているわけです。両者を分ける柵が無くなってより恐怖やストレスを感じるのは、ゴリラの方なのは当たり前の事です。
よく、「相手の立場に立って考えなさい」と言いますが、これはなかなか難しいものです。動物園のプロの飼育係でも下痢をするほど怯えているゴリラの気持ちが分からないのですから、私のような鈍感な人間には、人の心を推し量るなんて事は出来るはずがありません。
*日付は、文章を作成した日付となっています。
*その後の私のコメントが付いているものもあります。
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